top of page

奥山千春 インタビュー 

※インタビュアー:中尾聡志(Ordinary World)

──「結わい」で働き始めたのはいつからですか?

奥山 「結わい」が始まったときからですね。ここで働いている理学療法士の方と高校が同じで、そのつながりで声をかけてもらいました。「結わい」の前は、派遣で訪問入浴の仕事をしていました。主人がお休みの日に子どもを預けて。もともとは病院で看護師をしていて、育児に専念するために一度退職しましたが、やはり仕事をしたいという気持ちがあって。派遣のときは丸1日仕事に行かなければいけなかったり、主人もなかなか休みが取れない時期もあって、子どもたちのことも考えると厳しかった。でも、「結わい」では、1日1件、私の働ける時間で行けるから、自分の今の状況にすごくあっています。建宮さんも「来れる日に来てもらえればいいよ」「子ども優先でいいよ」と言ってくれて。急に休んでしまったこともあったんですが、それでも働かせてもらえるなら「頑張ります!」って感じです(笑)。

 

──「結わい」で働いて印象的だったことはありますか?

 

奥山 夏頃、週に2回訪問していた患者さん、90歳ぐらいのおばあちゃんで、脳梗塞で麻痺の方だったんですが、ほとんどしゃべらなかったんですね。その方が、しゃべってくれるようになったり、笑わせてくれるような発言をしてくれたり、「また来てね」とか「待ってるね」とか言ってもらえるようになったのはすごい嬉しかったですね。あと、ご家族の方とのコミュニケーションですね。娘さんが一人で看ていたのですが、お仕事されてる方だったので、帰ってきてからお話したり、コミュニケーションをとるのがすごく楽しかったです。それと、そう、食事のとき、自分で箸を持って食べられるようになったとき、生きようとする意欲がすごい見えたときに、よかったぁって思いました。

 

──生きようとする意欲。

 

奥山 自分で今まで食べさせてもらってたのが、手が出て、はじめて自分で箸を持って食べたときは、本当に感動しちゃって。すごい!って。今までも、口まで持っていくと食べてはいたけど、それが自分で手を出して「食べたい」ってなるのは、食べさせられるのと全然違うんですよね。食べる意欲っていうのは、生きる意欲になるのかなって。なんだか涙が出そうでした。「あいーと」っていう、人参とかブロッコリーとかの野菜も、舌でつぶせるような硬さの食べ物があるんです。はじめはミキサーにかけた食べ物をたべていたんですけど、「あいーと」を食事で出したときに手が出たんです。娘さんもすごい喜んでいました。

 

──食べるってすごいことなんですね。

 

奥山 私も結わいで働く前まではここまで大事なものだと思ってなかったんです。でも、大事なんだなと思いました。そもそも病気の影響で筋力や機能が落ちて、自分の口で食べられなくなる方もいます。栄養の話だけで言えば、チューブを使えば、栄養は、はいります。でも、本人に食べたいって言う気持ちがあるなら、ちょっとでも食べさせてあげたい。それをどういう風に進めていくか。病院でもやれるところはやっていると思うんですけど、それを家庭に帰ってきてどう継続していけるかというのが、訪問看護の役目なのかなって思っています。

 

──子育てとお仕事の両立はどうですか?

 

奥山 子育てをしていると働ける時間に限りがありますが、「結わい」では、その限られた時間でも働くことができる。私にとってはそれが一番大きかったんですね。ずっと働けないと思っていましたから。だから、私にとってはある意味冒険のような感じでした。でも、流れに身を任せてみたら、とても暖かく受け入れてもらえて。その時は悩みもしましたが、今は飛び出してみてよかったなって思っています。

 

最近は子どもたちの行事が忙しくてお休みさせてもらっているんですが、夏ごろに週に2回行っていたときは、「私働けてる」って思いながら過ごせていました。こんな風に働ける有難さも実感していましたね。(2014年の)6月から働き始めて、いろんなことが初めてで。今年は子どもが幼稚園に入って、幼稚園の仕組みも分からないままバタバタと始まった1年だったんですが、夏ぐらいからやっと1日のリズムが定着してきたというか。子どもを送って仕事に行って、仕事を終えて迎えに行って、そして家に帰って。今まで働きたくても働けなかった気持ちがあったので、やっとなんだか働けてるかもしれないって思えるようになりました。それがちゃんとした両立かどうかは分からないですけど、でも自分の中でしっかり時間を管理しながら動けていたので、刺激的な感じはありました。

 

──いいリズムが定着したんですね。

 

奥山 でも、両立って言葉は簡単ですけど、両立してますとはやっぱり言えないです。12月頃、土曜日も仕事に行ってたんですが、下の子から「なんでぼくがお休みの日にお母さんは仕事に行ってるの?」って言われてしまって。それがずっと続いて泣いてしまうようになってしまって、すごく悩んだんです。それで、年末ぐらいから土曜日は少し厳しいですってお伝えをして。そこも建宮さんはいいよって言ってくれたので、土曜日はお休みにさせてもらいました。そんなこともあったので、やっぱり、両立してますとは言い切れないですね。子育てって本当に大変です(笑)。

 

 

2015/3/12 中尾聡志(Ordinary World)=文

bottom of page